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 朝起きて学校に出発するまでのあいだ、『功利主義入門』を読み進める。第3章で紹介されているゴドウィンとウォルストンクラフトのエピソードが興味深かった。
 イギリスの思想家ウィリアム・ゴドウィンは、功利主義者にして名高きアナーキストであった。彼ははじめ、「各人を一人として数え、誰もそれ以上には数えない」というベンサムのテーゼを極めて絶対的なものとして受容していた。自分の恋人や家族対してであっても、彼/彼女が自分の愛する人あるからというだけで高い道徳的地位を与え、功利計算で「一人以上として」数えることは、えこひいきであって不正だというのである。
 ゴドウィンのこの主張は、後にマルクスも『共産党宣言』で主張したお馴染みの提案へと帰結した。婚姻制度の廃止である。ゴドウィンにとって婚姻制度は、ロマンチシズムに惑わされて誤りがちな結婚という選択を未来永劫固定化させようとする不合理なものである上に、家族に対する偏愛・えこひいきを助長するものであるように思えたのである。
 しかし、ゴドウィンは以上のような主張を述べた『政治的正義』を出版した直後に、フェミニズム思想家のメアリ・ウォルストンクラフトと恋に落ちた。既に婚外子を抱え、社会的非難に耐えかねていた彼女は、彼の子を妊娠したことを受けて、ゴドウィンに自分と結婚をするように求めた。ゴドウィンは、前述したように婚姻制度廃止主義者として知られていたが、苦しむウォルストンクラフトを見かねてか、彼女との結婚に同意する。
 そして、彼の功利主義理論にも修正が加えられた。結婚し家族を作ることは、人の人生を活き活きとさせて彼自身の幸福を生み出す上に、共同生活を送る中で家族という他者を幸せにする機会を生み、さらには利他的な徳性を涵養するのにも役立つ功利主義的に望ましい制度だと言うのである。
 功利主義理論の発達に恋愛が関わっているという分析は面白い。熱烈な恋をした功利主義者といえば、ゴドウィンだけでなくJ.S.ミルも有名である。ミルも含めて、功利主義と恋愛の関係について機会があれば調べてみたいと思った。

 2限は「We Are The World」のメイキングビデオを観させられてそれで1時間が終わった。わりと感動してしまった。根本的に単純な人間なのだ。

 そのあと部室に行くと、すみこさんが来る。ありきぃさんと3人で野球を観に行くのだ。しばらくして√2さんと病院さんが入室。すみこさんのBLカップリングトークに2人が引きまくってるのが面白かった。前輪をいくら追いかけても追いつくことのできない後輪、切ないね。
 ありきぃさんがいらっしゃる気配がない上に、そのあと某彼氏さんが来て死にたくなったので、また大戸屋に逃避する。夕食が遅くなるかと思って板そばと唐揚げ丼のセットを頼んでしまったが、量が多すぎて困ったし、結局ありきぃさんにお弁当を買ってもらってしまったので(ごめんなさい!)、板そばだけでよかったなぁ。反省。
 部室に帰る。ありきぃさんからシャンパンをいただく。おいしかった。そして、お菓子とお洋服と、あとあおいさんからの預かり物だというお財布とスターバックスカードをいただいた。こう書いてみると色々いただいてばかりだ。昨日つい「慰めてくれる後輩を持ったことだけが、俺の幸せだ」などと書いてしまったが、優しい先輩たちを持ったことも俺の幸せだった。
 まだ部室にいた某カップルさんたちの様子を伺う。会話がない。俺に気を遣っているのかもしれないが、それでも居づらさに変わりはなかったから、あの2人が並んで座っているのを見るだけで俺は辛いのだろう。救いようがないね。
 その後、しばらくみんなで歓談しているうちに、ドラさんがすみこさんに入部を持ちかける。弁論部ノートにサインさせることに成功。ぜひ定着してほしいなあ。

 その後、後楽園に移動する。某元カノの家に行く時に使ったなぁ、などと考えてしまう自分がやだ。哀愁。
 試合は伝統の巨人阪神戦。先発は杉内対能見の左腕対決。バックネット裏で球筋がよく見えた。投手戦となるかと思いきや、1回裏に巨人が阿部の犠牲フライで先制し、2回表に大和・今成・能見の三連続適時打で阪神が逆転、その裏に巨人が寺内と長野のソロホームランで同点に追いつくと、3回表に関本の2点タイムリーで阪神が再び勝ち越し……という壮絶な打ち合いになった。結局、5回裏の平野の本塁悪送球での2点が響いて巨人が勝利。シーソーゲームでとても面白かったのだが、女性陣はビールにあてられて熟睡。もったいない。

 7/7は七夕だ。願いたいことは1つだけだが、きっと織姫と彦星だって、初々しくてお似合いの1年生カップルの未来を祝福することだろう……。

功利主義入門―はじめての倫理学 (ちくま新書)

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